所得税を計算するときに給与所得控除額と所得控除額という言葉が出てきます。同じ所得控除なんだから同じじゃないの?と思いますが、実は違うのです。
給与所得控除額と所得控除額
サラリーマンの場合
サラリーマンなどの給与所得者の場合、
課税所得=給与所得-所得控除
給与所得=給与収入-給与所得控除
となります。
これを言い換えると
給与収入=給与所得+給与所得控除
給与所得=課税所得+所得控除
となり、図で表すとこうなります。
<参考>自営業者の場合は
ちなみに自営業者等の場合は、
課税標準額=所得-所得控除
所得=収入-必要経費
となります。
これを言い換えると
収入=所得+必要経費
所得=課税所得+所得控除
となり、図で表すとこうなります。
給与所得控除とは
つまり給与所得控除とは給与所得を計算するときに、収入から差し引くものなのです。
給与所得控除は年収が少ないほど多く控除されるようになっているという、累進性があるものです。
また上記のように個人事業主などの経費にあたる部分になります。
所得控除とは
これに対し所得控除は、課税標準額を計算するときに給与所得から差し引くものです。
所得控除は個々の担税力に合わせて税金が公平に徴収されるようになっています。
給与所得控除の計算方法
平成30年分となりますが、以下のようになっています(最新の情報は国税庁HPをご参照ください)。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円 |
1,800,000円超 3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超 6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超 10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
(出典:国税庁HP)
所得控除の種類
所得控除は以下のものがあります。
雑損控除
医療費控除
社会保険料控除
小規模企業共済等掛金控除
生命保険料控除
地震保険料控除
寄付金控除
寡婦・寡夫控除
勤労学生控除
障害者控除
配偶者控除
配偶者特別控除
扶養控除
基礎控除
青色申告特別控除
控除についてはこちらの記事をご覧ください

給与所得控除と所得控除の違い
給与所得控除は自動的に年末調整にて控除されています。
所得控除は自分で申告して控除されるものです。例えばそれは扶養控除等申告書であったり、保険料控除申告書、配偶者控除等申告書です。
さらに特定支出控除
給与所得控除、所得控除といろいろと控除がありますが、さらに特定支出控除というものもあります。
特定支出控除は、その名のとおり給与所得者が特定の支出をしたときに、その特定支出の合計額が、給与所得控除額の1/2を超える場合に、その超えた金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度です。
どのような支出があてはまるかというと、
1 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
2 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
3 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
4 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
※平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象となります。5 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
6 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
(1) 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2) 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3) 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)
※6の支出については、平成25年分以後、特定支出の対象となります。(出典:国税庁HP)
ややこしい控除をまとめてみた
いろいろと控除がややこしいのでまとめてみました。なおさらにややこしくなるので特定支出控除は省いています。
給与収入-給与所得控除=給与所得
給与所得ー所得控除=課税所得
課税所得×所得税率-税額控除=所得税
担税力
担税力とは税金を負担できる能力のことです。
例えば、独身の人と家族のある人、学費のかからない子供がいる人と学費のかかる子供がいる人、自身や家族が健康な人となんらかの障害がある場合というように、人によって事情は様々であり、事情によって家計の負担も違います。
そこで、そのような様々な事情を勘案して、なるべく平等に税金を支払えるように、税金の計算方法は定められています。